むかし、むかし 丸岡に美しい娘(お絹)をもつ松屋(姓 津田)という商人がいたんだって。ある日、この娘を連れて金津まで商売に行くことになって、坂井村の長屋橋にさしかかったところ、一人のりっぱな青年と通り合わせになったんだって。青年は一目でこの美しい娘を気に入ってしまいました。しかし、この青年は長屋橋の川の渕の大蛇の化身だったんだって。青年は娘の父親に「もし娘さんをわたしの妻にいただけるのなら、一晩にして金持ちになれる方法をお教えてあげます。」 といったのです。娘は、その青年のりっぱさにほれこんでしまい、父親も嫁にだすことにし、婚礼の式をあげたんだって。その式のあと、怖い目をした青年は自分が長屋橋の渕にすむ大蛇であることをつげたのです。娘は、泣きながらもそのまま大蛇と一緒に長屋橋の渕に沈んでいったんだって。さて、松屋はこの大蛇からびんつけの技法(松屋の裏の池の水を使って油を造ると、香りが最高級品ができる。)を教えられ、それを売って大金持ちになったんだって。(びんづけとは今で言う美容の頭髪につける油のこと。)
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何年かたって、丸岡に大火事がおこりました。その時、二匹の大蛇が松屋の主人に「水をくれー!」と叫んだので、水を与えたところ、大蛇は松の大木にあがり、口から水を吹き出し松屋にかけ、松屋は焼けなかったんだって。数年たって、また丸岡に大火事がおこり、この時は二匹の大蛇がまた現れ、主人に「水をくれー!」と叫んだが、主人は水を与えなかったんだって。そうすると、松屋はたちまち焼けてしまったのです。その焼け跡には二匹の大蛇が無惨な姿で死んでいたんだって。松屋はその供養のために、各地に地蔵様を建てました。その後、いつしか貧乏となり、お屋敷も人の手にわたってしまったとか。
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